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Ours is essentially a tragic age, so we refuse to take it tragically. The cataclysm has happened, we are among the ruins, we start to build up new little habitats, to have new little hopes. It is rather hard work: there is now no smooth road into the future: but we go round, or scramble over the obstacles. We've got to live, no matter how many skies have fallen. This was more or less Constance Chatterley's position. The war had brought the roof down over her head. And she had realised that one must live and learn.
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2010年 07月 20日
地名表記のデジタルvsアナログ
 やや気になる記事が目に留まった。リンクを張るだけにしておくと、一定時間が過ぎて元記事がアーカイブに移された場合に困るので、出典を明記して全文を引用しておく。
YOMIURI ONLINEより
京の通り名不要!?ネットで地図検索できず

 「上(あが)る」「下(さが)る」「東入(い)る」「西入る」と、通り名を起点に場所を示す京都市中心部の住居表示が、岐路に立たされている。京都独自の伝統的な表記だが、標準化の進むインターネットやカーナビゲーションの大半は通り名が不要なものとみなされ、入力しても地図検索ができない状態。ネット広告や名刺からも通り名を抜く表記が増え、平安時代以来続く地名表記に親しんできた市民には「通り名がないと、場所がどこかわからない」と戸惑いが広がる。
 「京都の不思議」の著書がある作家黒田正子さんは最近、ネットで化粧品を買おうと、京都市内の自分の会社の所在地を入力すると、受け付けてもらえず驚いた。
 京都市内は通り名だけでもほとんどの郵便物が届く特有の地域。黒田さんはいつものように「中京区高倉通夷川上る」と入力したが、店から宅配業者へ手配するコンピューターシステムが対応しておらず、町名と番地を改めて入力したという。黒田さんは「標準化によって、京文化ともいえる通り名や『上る、下る』が消えてしまうような気がする」と危惧(きぐ)する。
 元々、「上る、下る(上ル、下ル)」といった京都市中心部の住居表示は独特だ。例えば市役所の所在地は登記簿などで「中京区寺町通御池上る上本能寺前町488番地」とあり、通り名と町名、番地を長々と併記するのが正式な表示となっている。
 だが、ネットの地図検索でこれを入力すると、「見つかりません」か、周辺の町名や店の情報が表示されるだけで地図が出てこない。市役所の地図を探すには「中京区上本能寺前町488番地」と入力しなければならず、通り名は無用というわけだ。
 ネットに地図情報を提供する大手「ゼンリン」によると、検索システムに町名と番地を基にした全国標準の住居表示を採用していることが理由。京都独自の通り名などはエリアが特定できないため、担当者は「ピンポイントで示すのは難しい」と話す。
 こうした現状に戸惑うのは、多くの京都市民。市民の地理感覚では市役所なら「寺町通御池上る」だけで十分で、通り名こそが重要な情報だ。そもそも、町名が必要だと言われても、町の数(中京区だけで498町)や同名の町(市内9か所にある桝屋町など)が多くて覚えられないという事情もある。
 一部には、通り名に対応した地図検索ソフトも開発されているが、まだ普及していない。カーナビも通り名は受け付けず、郵便番号から住所を探すソフトの中にも通り名抜きで表示されるものがある。
 不動産の物件情報を集めたサイトに、通り名を省いて掲載した市内の不動産業者は「町名と番地さえあればネットで地図を呼び出せる。通り名を併記すると、地図は出てこないし、長くなりすぎる」と語る。
 京都国立博物館もチラシは通り名の「東山七条」だが、館員の名刺は「東山区茶屋町527番」。ネットが普及して以降、同様の動きは市内の事業所や店舗にも広がっているという。
 京都で約800年続く歌道の冷泉家当主夫人の冷泉貴実子さん(62)は「我が家の現住所を今出川通烏丸東入ると言うと、京都の人はぱっと景色が浮かびますが、町名の玄武町ではタクシー運転手にも通じません。ネットでは町名が便利なのでしょうが、そればかりになると住む人も困ります。通り名を大事にしてほしいですね」と話している。

(2010年7月20日14時52分 読売新聞)
 なんともツッコミどころや揚げ足の取りどころが満載で、楽しげな記事ではないか。あれこれケチをつける前に、まずこの記事が何を言いたいのかというところを忖度してみると、京都市内における地名表記で通り名を起点にするスタイルが廃れつつあるということだろうか。そして、その背景としてカーナビや地図ソフトなどが対応しやすい町名+番地スタイルが京都市内でも一般的になりつつある、ということか。そしてそして、通り名スタイルに馴染んできた京都市民が戸惑っている云々、ということなのだろうか。

 一言でいえば、結論ありきの記事で、全体としての信憑性は低いと思う。もちろん、報道されている範囲での一つひとつの事実関係は正しいのだろう。黒田正子氏が宅配のシステムを使いこなせなかっただとか、広告や名刺における表記が町名+番地スタイルになりつつあるとかの話は、おそらく事実なのだと思う。しかし、そうしたことが意味しているのは、通り名スタイルの衰退なのかといえば、それは違うと思う。

 通り名による表記はけっして衰退していない。通り名スタイルであれ、町名スタイルであれ、シチュエーションを判断して使い分けているのが普通だ。カーナビや地図ソフト、あるいはまったく土地鑑のない人が相手なら、町名や番地を入力するか、近くのランドマークを利用して説明するし、通りの位置関係などが分かっている人に対しての場合は、躊躇うことなく通り名で押し通す。碁盤目の内側、すなわち京都市内の旧上京下京が、話す側と聞く側にとって前提となる共通の空間である場合は、なんの問題もなく通り名スタイルによる地名表記は行われている。

 ビジネスにせよ、日常会話にせよ、碁盤目の内側ですべてが間に合う時代ではないのだから、通り名スタイルだけではなにかと不都合が生じてくるのは確かだが、だからといってこのスタイルが廃れつつあるかのように言うのは、ものごとの片面だけを取りあげて、それを全体的な傾向であるかのように言いくるめる胡散臭さが漂っていると言わざるを得ない。もし衰退を言うのであれば、従来は通り名スタイルが使われていたシチュエーションでも町名+番地スタイルが当たり前になっているというくらいの事例を見つけてくる必要がある。

 まあ、そんなに深く考えて書いた記事ではないのかも知れない。その証拠に、通り名による表記が京都全般の特徴であるかのごとく読めるが、これはもちろん碁盤目の内側でしか通用しない。はじめの方に「京都市中心部」と書いてはいるものの、文章全体の勢いが京都論であるかのようになっているので、京都全域の話?との錯覚も抱いてしまうのだ。このあたりは、実は揚げ足取りなのだが、上ル下ルを用いた通り名スタイルが、平安時代から普及していたかのような書きぶりをしている点についてはどうだろう。

 町名板に興味をもっている関係からいえば、仁丹版の基本スタイルということもあって、通り名+上ル/下ル/東入ル/西入ルが、明治以来のものというあたりまでは跡づけることはできる。そこに加えて、近世や中世の文書類を漁れば、あるいは応仁の乱あたりまではさかのぼれるかも知れないし、単発の用例というのなら、もう少し古いのが出てこないとも限らない。しかし、古い用例がいくらさかのぼれたとしても、それが固定的なもので広く普及していたかといえば、そうは簡単には言えない。昭和の初期や大正ごろの新聞広告には、時々、北入ル南入ルといったものもお目に掛かるし、町名にしても、たとえば松原通柳馬場東入町といった具合に、通り名で記した上で「町」を添えるスタイルもある。

 通り名を基準にしている点のみで言えば、北入ルだろうが、東入町だろうが、同種のスタイルと括ることもでき、それらを伝統的なスタイルと言うのなら言えなくはない。だが記事がほのめかしているように、それが平安の昔から続く固定的な表記スタイルであったとは、とてもではないが言えたものではない。

 そもそものところ、ここで取りあげられている問題は、利便性と伝統とのせめぎ合いではなく、デジタルかアナログかということではないだろうか。デジタルだのアナログだのいうと、飛躍し過ぎて聞こえるかも知れないが、規格化しやすい標準スタイルを採用するのか、個別性を重んじた特殊なスタイルを採用するのかということだろう。そうであれば、前者は町名というスタイルそれ自体がポイントなのではなく(京都の場合はなまじ町名を使うとわかりづらくなるのは記事にある通り)、規格化できるのであれば緯度経度といった数値でも構わないわけだからデジタルになるし、後者は汎用性には欠けるが個々の事情に特化されているという点でアナログとなる。あくまでも比喩の話だが、デジタルvsアナログの関係を重ね合わせることもできなくはないだろう。実際のところは、先に触れたように、相手に応じて使い分けているのだが、デジタルvsアナログの比喩がこんなところにも現れたという意味では興味深いケースである。


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by office34 | 2010-07-20 18:48