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Ours is essentially a tragic age, so we refuse to take it tragically. The cataclysm has happened, we are among the ruins, we start to build up new little habitats, to have new little hopes. It is rather hard work: there is now no smooth road into the future: but we go round, or scramble over the obstacles. We've got to live, no matter how many skies have fallen. This was more or less Constance Chatterley's position. The war had brought the roof down over her head. And she had realised that one must live and learn.
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2012年 01月 03日
白河夜船
「白河夜船」という言葉がある。辞書的には「(1)熟睡していて何も知らないこと。何も気がつかないほどよく寝入っているさま。(2)知ったかぶり」とのこと。さらに言葉の由来としては「京都を見てきたふりをする者が、京の白河のことを聞かれて、川の名だと思い、夜、船で通ったから知らないと答えたという話によるという」との解説が載る(以上、大辞泉[初版]による)

 いろいろなところで聞く標準的な説明かとは思うのだが、厳密なところを突くと気になってならない言葉でもある。たとえば由来のところで「川の名だと思い、夜、船で通ったから知らないと」云々とあるわけだが、そこには「本当は川の名前ではないのだが」という含意があるように読める。確かに、白河(白川)はエリア名として使われることも多いが、「川の名前でなく」と言い切ると、それは間違いになる。白川という川は厳然と存在しているからである。エリア名でいうところの「白川」も、掘り下げていけば河川の白川流域という意味合いなのである。

それでは、含意があるように読めると、当方が考えた部分に問題があるのだろうか。上記の説明には「川の名前ではなく」とは一言も書いていない。それなら白川のことを尋ねられ、夜、船で通ったから云々という回答に面白みが生じるのはどういうわけなのだろうか。よもや「一般には船で通るような大きな川ではないのに」という手の込んだ含意があるとは思えない。それなら、エリア名であることが自明の質問であるにも関わらず、川の名前と思って答えたというところが面白い、ということなのだろうか。一応、筋は通るが、どうも釈然としない。

こうなってくると、この「白河夜船」の出典を捜すことになるのだが、ここでまた新たな問題とぶち当たる。それは「毛吹草に載っている」云々のよくある説明である。「毛吹草に次のような話があります」との前振りをしておき、上に引用した辞書的な由来説明の話を紹介するもので、ネットで捜せば、複数の場所で似たような説明に出合う。ところがである。『毛吹草』には、そうした落語風の小咄は見あたらない。確認のために書いておくが、当方のいう『毛吹草』とは松江重鎮の記した俳諧の手引書のことであり、岩波文庫で活字となっているものを指している。同題の別本があるのか、略本・広本といったレベルの異同があるのか等々、アッと驚く事情が隠されているのならともかく、岩波文庫版の『毛吹草』に徴する限り、由来となる話は見あたらない。

もっとも「白河夜船」に関する記述が存在しないわけではない。巻第二の「世話付古語」のところに、触れるところがあるにはある。この世話付古語は世間に流布する慣用句を列挙するものであり、古語でいうところの「世話」が口語や俗語の謂いであることを思えば理解しやすい。「付古語」とあるのは、ピックアップしたものは「現在巷間に流布している言い回しを基本とするが、中にはすでに使われなくなった古いものも入ってます」という程度の意味なのだろう。その最初のところを具体例として見てみると、以下のような具合である。
 思ひうちにあれはいろほかにあらはる
おもふことはねことにいふ
 とをきははなのか
おもふ中にはかきをせよ
 すみにちかづけはくろし
しゆにましはれはあかくなる

それぞれ漢字を交えて書き直すと「思ひ、内にあれば、色、他に現る」「思ふことは寝言に言ふ」「遠きは花の香」「思ふ仲には垣をせよ」「墨に近づけば黒し」「朱に交はれば赤くなる」となる。「遠きは花の香」と「思ふ仲には垣をせよ」との関係は分かりづらいが、意味の近いものを並べているような雰囲気である。「白川夜船」が出てくるのも、こうした列挙の中であり、以下に前後のいくつかを併せて書き出してみよう。
あはぬふたあれはあふふた有
すつる神あれは引あぐる神有
 こせうまるのみ
 しら川よぶね
 見ぬ京物がたり
国にぬす人
家にねすみ
僧に法あり
一字分下げられているところの意味が分かりづらいのだが、「合はぬ蓋あれば合ふ蓋有り」と「捨つる神あれば引きあぐる神有り」、「白河夜船」と「見ぬ京物語り」は同趣の言葉として並べられていると思われる。間に鋏まれた「胡椒丸呑み」は物事は鵜呑みにするのではなくて吟味が必要との意味合いのようだが、一連の流れの中での位置づけは不明。

煩雑になってきたので切り上げよう。要は「白河夜船」という言葉は岩波文庫版『毛吹草』には載っているものの、言葉の由来となった小咄は載っていないという話である。毛吹草に載る話として「白河夜船」の由来まで紹介するのは、その説明こそが白河夜船なのか、あるいは毛吹草でも巻第二「世話付古語」以外のところに出てくる内容で、当方が完全に見落としているのかのいずれかだろう。

ちなみに、今回、この「白河夜船」を取りあげたのは、追々調べていかねばならない課題として白幽子の話に触れたからである。関連資料としてまずチェックしなければならない白隠禅師の「夜船閑話やせんかんな」について調べていた際に、ふと「白河夜船」が気になっただけのことである。


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by office34 | 2012-01-03 09:00