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Ours is essentially a tragic age, so we refuse to take it tragically. The cataclysm has happened, we are among the ruins, we start to build up new little habitats, to have new little hopes. It is rather hard work: there is now no smooth road into the future: but we go round, or scramble over the obstacles. We've got to live, no matter how many skies have fallen. This was more or less Constance Chatterley's position. The war had brought the roof down over her head. And she had realised that one must live and learn.
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2012年 06月 09日
山本覚馬建白(13)~「建国術」1/3
「国体」に続く編目は「建国術」と銘打たれている。国家建設の方法に関する提案で、端的には商業活動を国家の基軸にせよとの主張、竹林熊彦の言を借りれば「商業立国論」である。「国体」と並ぶ重要編目の一つというべきか。農業国家に対する商業国家の優越性が一貫して述べられるわけだが、具体的事例が多く呼び出されているのは、聞き手の理解を助けるための配慮だろうか。なかには浅薄の誹りを免れない解釈も少なからず見受けられるものの、それも時代的な制約を思えば致し方ないことである。なおこの「建国術」の編目も三回に分ける。


      建國術」
余思ふニ宇内の國々其國本を建る(1)商を専とする有農を専と」する有商を以てする國は政行れ(2)衣食も足り富饒にして人も勇敢兵」備も充實也農を以てする國は之にしかす共和政治ヨーロツハの内にてハ」イキリス フランス フロイス商を以て盛なる國なり日本支那等ハ農を」以てする故に之にしかす其故如何となれは壁へは(3)百万石の地より収る賦」凡百萬金と見て夫を工人に(4)渡し器物を作らしめは一倍増て二百萬金」となる夫を商人へ渡しあきなはしめは又之ニ倍し(5)遂ニ(6)其金の増事」限なかるへし然るに上えハ(7)矢張元の百万金を取也如是(8)せは農も盛工も(9)」思ふまゝに物をも作られ(10)商も利を得へし


---------------------------------------
(1)建る-建ルニ  (2)政行れ-政行シ
(3)壁へは-譬ヘバ  (4)工人に-工人へ  (5)倍し-倍
(6)遂ニ-遂ニハ  (7)然るに上えハ-然ル上ニ  
(8)如是-如斯  (9)工も-工  (10)作られ-作ラレシ


(数字)は青山霞村『山本覚馬』所引「管見」との異同



【読み下し】      建国術
余思ふに、宇内うだいの国々、その国本くにもとを建つる、商を専もっぱらとする有り、農を専らとする有り。商を以てする国は政せいおこなはれ、衣食も足り、富饒ふぜうにして、人も勇敢、兵備へいびも充実するなり。農を以てする国はこれにしかず。共和政治ヨーロツパの内にては、イギリス、フランス、プロイス、商を以て盛んなる国なり。日本、支那等は、農を以てする故に、これにしかず。その故ゆゑ如何いかんとなれば、譬たとへば百万石の地より収むる賦、凡およそ百万金と見て、それを工人に渡し、器物を作らしめば、一倍増して二百万金となる。それを商人へ渡し、あきなはしめば、又これに倍し、遂にその金の増す事、限りなかるべし。然しかるに、上へはやはり元の百万金を取るなり。是これの如くせば、農も盛さかへ、工も思ふまゝに物をも作られ、商も利を得べし。


【語釈】
宇内の國々:「宇内」は世の中すべての意味。ここでは世界の国々。
國本:国家の基本。「国の本」と助辞を補うのか正しいか。『世事見聞録』には「民は国の本もとにて、天下国家を保つ根元の土台なり」という記述がある(引用は岩波文庫,1994)。なお「国体」との間で意図的な使い分けがあるか否かは不明。
商を専とする:商業活動を国家の基本とすること。歴史用語として「重商主義」というものがあるが、そうした思想を指すわけではない。漠然と農業主体、すなわち自給自足的な体制よりは、貨幣経済に重きをおいた国家運営をいうに過ぎない。また以下の文中に頻出する「商」「農」等の語は、場合によっては商人や農民を意味することもある。一つの語を文脈で複数の意味に使い分けているのか、あるいは行為と主体を厳密に区別せずに同じ語で表しているのかは、検討の余地がある。
農を専らとする:ここも「農本主義」等の体系化された考え方で捉える必要はないだろう。自給自足が多くを占める生活様式のこと。
政行れ:意味不明。文脈的には、盛んになるの意か。青山版「管見」では、「政行し」となっており、仮にこれを採用するなら「れ」は誤字で、「盛行」の宛字とも考えられる。ここでは一時的に「政せいおこなはれ」と読んでおくが、その場合、正しい政治が行われ、ぐらいの意味だろうか。もっとも道徳的な判断が加わる文脈でもないので、ムリがある。
富饒:富んで豊かなこと。
共和政治:ここでは、厳密に政治体制のことをいうのではなく、一般の民衆が政治に関与するという意味合いで使っている言葉だろう。republicの訳語としての「共和制」「共和政治」なる言葉が、慶応四年(1868年)の時点でどの程度、普及していたのかは未調査。
イキリス:イギリス。19世紀のイギリスは、ナポレオン戦争とウィーン体制を経て、近代国家へと変貌を遂げる過程にある。大英帝国の最盛期となったヴィクトリア朝(1837~1901)のただ中にあり、世紀の中葉に絞れば、政治的にはトーリーとホイッグの二大党派が、保守党、自由党という近代政党に装いを改めている。
フランス:ナポレオン戦争と二つの市民革命(1830年,1848年)を経て、第二共和制から第二帝政、そして普仏戦争へと続くのがフランスの19世紀。
フロイス:プロシア。ドイツ圏域にある領邦国家の一つ。ナポレオンの没落後は、ドイツ関税同盟を主導するなど産業の発展が著しく、オーストリアと並んで大陸における一大勢力となった。19世紀中葉にウィーン体制が崩壊すると、プロシアを中心とするドイツ統一の気運が高まる。プロシア国内でもビスマルク政権下での充実期を迎えており、世紀後半の新しい勢力図が大陸に描かれることとなる。
日本:日本でも貨幣経済は進展しており、覚馬が記すような単純な二分法で説明できるものではない。しかし相対的な次元でいえば、イギリスを筆頭に、産業資本が社会の支配を強めるヨーロッパの国家群との比にはならない。
凡百萬金:ここでいう「金」は江戸時代に多く流通していた4.76匁の小判金貨に基づく単位だろうか(それであれば、1金=1両)。「建国術」の編目の後の方で触れられる「わつか一萬金程」という記述も併せて、具体的な額は不明。
夫を工人~限なかるへし:一定価値の作物はそのまま消費すれば、原価のままの価値しかない。それに対して換金して職人に渡せば、それを元手に製品を作るので、およそ倍の価値になる。さらに利潤を商人の資本に廻せば、さらに二倍となり、増え方は無限であるとの論理。仮の話とはいえ、乱暴な言い分であるのは明白。しかし、何倍になるかとの数字を度外視しておき、現物消費と資本として投下することの違いを述べるものとみれば、一応の理解は得られる。提案を抽象的な概念レベルに留めるのではなく、具体的な数値を伴わせるのは「建白」に特徴的な論法である。数値の具体性には突拍子なところもあるが、提案の軸には的確な指摘が多い。
上えハ:文意不明。青山版「管見」では解しやすく書き換えられているように思うが、元のままで強引に解釈すると、「そうして上に対しては云々」となるので、「上」は元手100万金の貸し付け主である藩を指すものとも考えられる。つまり、元手はそっくり返ってきて、利ざやの分だけで下々が潤うということ。


【大意】
私が見るところでは、世界には国家の基軸を商業活動に置くところと、農業生産に置くところがあるようだ。前者は国力が蓄えられ、人心や兵力も充実しているが、後者はそうはいかない。ヨーロッパではイギリス、フランス、プロシアが商業国家であり、農業国家の日本や清国はこれに及ばない。こうした事例を考えてみよう。百万石の土地から百万金の税収が得られるとしよう。それを資本として、職人に渡して物品を作らせれば、倍の価値になる。さらに利潤を商人に廻せば、利幅はもっと大きくなり、資本の増え方は無限となる。そうしてお上へはもとの百万金は回収される。こういう制度にすれば、農業も盛んになるだろうし、職人たちも自由に物品を作ることができ、商人もまた利潤を手にすることができるだろう。





「山本覚馬建白」目録


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by office34 | 2012-06-09 07:42 | 明治人物志