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Ours is essentially a tragic age, so we refuse to take it tragically. The cataclysm has happened, we are among the ruins, we start to build up new little habitats, to have new little hopes. It is rather hard work: there is now no smooth road into the future: but we go round, or scramble over the obstacles. We've got to live, no matter how many skies have fallen. This was more or less Constance Chatterley's position. The war had brought the roof down over her head. And she had realised that one must live and learn.
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2012年 12月 18日
山本覚馬建白(26)~「髪制」
髷を結う習慣を野卑と断じて、その廃止を訴える。廃止に伴う経済効果の計算方法は理解に苦しむところだが、導かれた数字のみを突きつけられると、おもわず青ざめてしまう額である。覚馬の説によれば、野卑な風俗を続けることは、一個の人間としての体裁が悪いだけでなく、膨大な金額の国家的損失につながるようだ。


       髪制
余古き(1)繪巻物の人物を見るに髭髪を剌(2)らす自ら質朴の風なり」今も失瀬小原(3)の里人は髭髪を剌らす(4)自ら王政の古風存なる(5)へし
然るに應仁の乱夏日の炎天に困しみ頭の前を剌り始(6)遂に世上一般の」事となりぬ清朝の風を(7)見悪き事なれとも我野卑に比すれは優(8)」古風は(9)品格も高く天地萬國へ對し冝き(10)事なれは之を復するに」しかす方今京坂(11)江戸にてハ凡二万五千人程(12)結髪職有人(13)其結」髪所至つて雑沓する事なれハ或半時或一時(14)費遊懦(15)の者集り博奕又は」遊治(16)の談のミにて少年輩をして(17)悪道へ導徒に光陰を費のミならす(18)」大に風俗を乱す也且日本五千萬口(19)一家(20)五人(21)として千萬家(22)也一家一年」用ゆる剌刀(23)油元結費金二分ツゝと見て五百萬金なり右人口結髪」の間業を廃るの費(24)五百万金位に當るへし如此冗費を省古風の」如く士農工商冠の別を(25)立毎朝自ら梳らハ品格もよく快かるへし」然れとも一時に改れハ人情ニ背(26)もあるへし故(27)十歳以下の者は古風に」復し其余は随意に任すへし結髪職油元結を製(28)者も拾歳前ハ」禁へしさすれハ二拾年を出すして漸ゝ(29)古風に復すへし」


---------------------------------------
(1)古き-古記  (2)剌らす-剃ラズ  
(3)失瀬小原-八瀬大原  (4)剌らす-剃ラズ  (5)存なる-存スル
(6)剌り始-剃リシガ  (7)風を-風モ  (8)優-優ニシテ
(9)古風は-士風も  (10)冝き-宜キ  (11)京坂-京大坂
(12)程-程ノ  (13)有人-有リ  (14)一時-一時ヲ
(15)遊懦-遊惰  (16)遊治-遊冶  (17)をして-ヲ
(18)ならす-ニテ  (19)五千萬口-五千萬  20)一家-一軒
(21)五人-五  (22)千萬家-千萬軒  (23)剌刀-剃刀
(24)の費-入費  (25)別を-前ヲ  
(26)背-背ク┐(合字:コト)  (27)故-故ニ  
(28)製者-製スル者  (29)漸ゝ-[なし]




(数字)は青山霞村『山本覚馬』所引「管見」との異同



【読み下し】      髪制はつせい
余、古き絵巻物の人物を見るに、髭髪しはつを剃らず、自おのづから質朴しつぼくの風なり。今も八瀬大原の里人さとびとは髭髪を剃らず、自おのづから王政の古風存あンなるべし。然しかるに応仁の乱、夏日かじつの炎天に困くるしみ、頭の前を剃り始め、遂に世上せじやう一般の事となりぬ。清朝の風を見る、悪しき事なれども、我が野卑やひに比すれば優いうなり。古風は品格も高く、天地万国へ対し冝よろしき事なれば、これを復するにしかず。方今はうこん、京坂江戸にては凡およそ二万五千人程結髪職けつはつしよく有り。人、その結髪所けつはつしよに至つて雑沓する事なれば或あるいは半時はんとき、或いは一時いつときついやし、遊懦いうだの者集まり博奕ばくち又は遊冶いうやの談はなしのみにて、少年輩をして悪道へ導き、徒らに光陰を費すのみならず、大いに風俗を乱すなり。且つ日本五千万口、一家五人として千万家なり。一家一年、用ゆる剃刀かみそり、油、元結もとゆひ、費金二分づつと見て五百万金なり。右人口、結髪の間、業なりはひを廃するの費ついえ、五百万金位に当たるべし。これの如き冗費を省き、古風の如く士農工商、冠かんむりの別を立て、毎朝自みづから梳くしけづらば品格もよく快こころよかるべし。然しかれども一時いつときに改むれば人情に背くもあるべし。故に十歳以下の者は古風に復し、その余は随意に任すべし。結髪職、油、元結を製する者も十歳前は禁ずべし。さすれば二十年を出ずして漸々ぜんぜん古風に復すべし。


【語釈】
古き繪巻物:「古き」の「き」は、「記」をくずした仮名文字。青山版「管見」のように「古記・絵物語」と読んでも意味が通じないわけではない。
髭髪:髪と髭。古くは髪かみも髭ひげも剃らなかったということ。月代さかやきを剃り上げることもしなければ、剃刀で顔を剃ったり、髭抜きで髭を抜いたりすることもなかったという。江戸時代には普通に行われていたそうした習慣は、古くからのものではなかったとする。江戸後期の故実家伊勢貞丈の『貞丈雑記』にも同じ内容のことが記されている(注)
(注)月代を剃る事、京都将軍の比(ころ)まではなし。皆惣髪(そうがみ)也。又もとゞりをわぐる事なし。茶せん髪なり。ゑぼしかぶる為なり。[中略]又古はひげをそり、ぬきなどする事なし。古の絵師の書(かき)たるふるき絵を見て知(しる)べし。ひげは刈(かり)たる体(てい)に見ゆる也。 改訂増補故実叢書『貞丈雑記』(明治図書出版,1993年)
自ら質朴:「質朴」は飾り気がなく素朴な様子。何もしないそのままの状態で(=おのずから)いても素朴な気高さがあるということ。
風:風俗。ならわしや習慣。ここでは古代の服飾が質朴であるということ。
失瀬小原:八瀬・大原の誤。青山版「管見」に従う。ここでは八瀬童子の風俗をいう。八瀬童子とは比叡山西麓の八瀬に住む人々で、古代以来の服飾文化を保持していたとされる。鬼の子孫だとか、壬申の乱では大海人皇子を守ったなどの話も伝わるが、伝説の域を出ないそれらは措くとしても、独自の風俗を持ち、とりわけ服飾や髪型は、時代とともに変遷する世俗のものとは一線を画していたという。(参考)
自ら王政の古風:伝統を保存するとかの意図があるわけではなく、あるがままの暮らしが古代の遺風を伝えているという趣旨。
存なるへし:「存」を「ある」と訓み、音便で「あなるべし」としておく。
應仁の乱、夏日の炎天:応仁の乱の頃から、夏の暑さに堪えかねて月代を剃り始めたという趣旨。伊勢貞丈『貞丈雑記』によれば、兜をかぶって頭がのぼせるのを防ぐため、合戦の時に武士が月代を剃るようになったとのこと。もともとは合戦時のみだったが、合戦続きの世の中になったので常に剃り上げるようになったという。
扨(さて)右のごとく合戦の間は月代をそれども、軍いくさやめば本(もと)のごとく惣髪(そうがみ)になる也。天正文禄年中などの比(ころ)天下大(おおい)にみだれ信玄謙信など、其外諸大将、合戦数年打(うち)続きたるゆへ、常に月代そる事絶ずして、其後(そののち)大平の世になりても其時の風儀やまずして、今日に至るまで月代そる事になりたる也。(前掲)
清朝の風:弁髪のこと。
悪き事なれとも:体裁が悪い。
我が野卑:月代を剃り上げた日本の髷姿は下品だということ。
優:上品。
古風:具体的には、王朝時代あるいはもっとさかのぼって飛鳥天平の頃を指しているように思われる。
天地万国:資源の節約をいう文脈で「天地に対し宜しき」とあれば、「天地」を「自然」の意味で解釈していいのだが、純度の劣った銭貨を作ることは「天地万国へ対し条理を弁え」ていないとする用例(「貨幣」)など、社会性の濃い事象で「天地万国」と使うこともある。この箇所もその一つで、これらのケースでは「天地」は「万国」に掛かる強調語と捉えるのがよさそうだ。
冝き事:悪くない、一応の格好はつくということ。
方今:最近、今日。
京坂江戸:京都、大坂、江戸。当時を代表する三大都市。
結髪職:床屋。
有人:「人」についてはやや不自然な感がいなめないのだが、強引に訳せないこともないので、そのままにしておく。青山版「管見」によれば「有り」。
雑沓する:混雑する。順番待ちの客等で混み合っているということか。式亭三馬の滑稽本『浮世床』(文化十年[1813年])は、床屋の集まってくる人々の会話をユーモラスに描いたもので、床屋が一種の社交場であったことをうまく伝えている。覚馬が難癖をつけるのは、こうした場所に集まってくることが時間の無駄であり、風紀の紊乱につながるという趣旨である。
或半時或一時:一~二時間。
遊懦の者:「懦」は弱いの意味なので、文脈的には「惰」が正しい。青山版「管見」に従う。「遊惰の者」であれば、怠け者の意味。
遊治の談:「遊治」では意味不明。青山版「管見」に従って「遊冶」に改める。「遊冶」であれば酒食にふけることの意味になり、この文脈では下ネタ等で盛り上がることをいう。
少年輩をして悪道へ:仕事もしないでウダウダしている大人は、子供たちにろくな影響を与えないということ。
徒に:無駄に。
光陰:時間。
風俗を乱す:社会の生活習慣を悪くするということ。
五千萬口:このあたりの数字は根拠のない概算か(参考)
二分:年間で髪結いに費やす金額が1世帯で2分とのこと。分は、1金(1両)の1/4なので、2分×1,000万世帯÷4=500万金との計算らしい。またwikipediaによれば、男の場合、髪結いの代金は「天明年間でおおよそ一回280文前後」とのことなので、その数字を1両=10,000文(明治2年)に適用してみると、2分=1/2両=5,000文、5,000文÷280文=17.8回、つまり1ヶ月に2回弱の頻度で床屋に行っていたイメージだろうか。
業を廃る:床屋に入り浸って仕事をしないこと。本来なら稼ぐことができるはずの額が無駄にされているとの考え。その総額を全国で五百万金ぐらいになるだろうと推測する。結髪のために使われる代金と、得られるはずのものが得られない損失、その二つを合計して一千万金が無駄になっているとする。ちなみに、幕末の相場を現代の貨幣価値に換算すれば1金(1両)がおよそ10万円程度というから・・・・・・。
冗費:無駄金。
古風の如く:「冠の別」云々より、推古朝の冠位十二階のような制度がイメージされているのだろうか。
自ら梳らハ:髪結いに頼らずに、自分で頭髪を整えること。「梳る」は髪を櫛ですくこと。
一時に改れハ:月代の禁令を一回の通達で徹底させること。
人情に背も:感覚的に受け入れがたいところが出てくる、ということ。
拾歳前ハ禁へし:それが家業であっても、十歳以下の子供であれば就業させないということ。月代と同じように、子供の段階でその風俗ないし仕事から遠ざけておけば、将来的な廃絶につながるという主張。
漸ゝ:次第に、だんだんと。


【大意】      髪制
日本は古くは月代さかやきを剃らなかったが、応仁の乱の頃から暑さに堪えかねて頭の前部を剃り上げるようになった。清朝の弁髪も見苦しいが、髷の下品さに比べると上品な方だ。そんな髷の習慣などやめて、品格があって世界のどこへ出しても恥ずかしくはない体裁、つまり冠を着用していた古来のスタイルに戻すべきである。今や京都、大坂、江戸では月代を剃る髪結いは二万五千人ほどになるが、人は床屋へ行っては博打や低俗な話に興じているだけだ。それは時間の無駄遣いであるだけでなく、風紀を乱して少年教育の観点でも弊害が多い。また日本の人口を五千万、一家族五人で計算すると、一つの世帯で一年に費やす剃刀代や元結い代は二分ぐらいだから国全体では五百万金が使われていることになる。髪結いにかかる時間を労働にあてると、これも全体で五百万金ほどになる。したがって合わせて一千万金が消えているわけだ。これらの無駄金を省き、古風に準じて職業の違いを冠で分かるようにするべきだ。そして髪の手入れは自分で行えば、品格もでるし、気分もさわやかになる。もちろんいっぺんに全部を改めることもできないから、二十年ほどかけて若い世代から改めていけばよかろう。








「山本覚馬建白」目録


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by office34 | 2012-12-18 04:53 | 明治人物志