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Ours is essentially a tragic age, so we refuse to take it tragically. The cataclysm has happened, we are among the ruins, we start to build up new little habitats, to have new little hopes. It is rather hard work: there is now no smooth road into the future: but we go round, or scramble over the obstacles. We've got to live, no matter how many skies have fallen. This was more or less Constance Chatterley's position. The war had brought the roof down over her head. And she had realised that one must live and learn.
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2013年 10月 14日
峰の嵐か松風か ~大堰川の小督塚(5)
先の記事では、小督伝説の広まりには『平家物語』以上に謡曲「小督」が大きな力となったのではないかとの話を書いた。その中では、「峰の嵐か松風か、尋ぬる人の琴の音か」という詞章がシンボリックなものであることにも触れたのだが、文言自体は謡曲「小督」が初出ではなく、『平家物語』にも登場する。
亀山のあたり近く、松の一むらあるかたに、かすかに琴ぞ聞こえける。峰の嵐か、松風か、たづぬる人の琴の音か、おぼつかなくは思へども、駒をはやめて行くほどに、片折戸したるうちに、琴をぞひきすさまれける。しばしひかへて聞きければ、まがふべうもなき小督殿の爪音なり。「楽はなにぞ」と聞きければ、「夫を思ひて恋ふ」とよむ「想夫恋」といふ楽なり。
新潮日本古典集成『平家物語』(中)より
伝本によって微妙に文言は変わっているようだが、「峰の嵐か、松風か、たづぬる人の琴の音か」の部分に限定すれば、大きく変わるものではない。それもそのはずというべきか、新潮日本古典集成の頭注には、『和漢朗詠集』(*)にも載る本歌があるとの指摘がある。
(*)藤原公任が編集したアンソロジー。シチュエーションに応じて口ずさむべき詞章を和歌や漢詩から引いて紹介したもの。現代でいえば、スピーチ用のカッコいいフレーズやここ一番での口説き文句をまとめたアンチョコ本みたいなもの。
もっとも、『朗詠集』の「管弦」セクションに「琴のねに峯の松風かよふなりいづれのをよりしらべそめけむ」が載るのは事実だが、この本歌が直接的に広まっていたかどうか。むしろ『平家物語』に取り込まれることによって、さらに謡曲「小督」の詞章として切り出されることによって、「峰の嵐か松風か、尋ぬる人の琴の音か」の形で人口に膾炙したとみるべきだろう。

「峰の嵐か松風か、たづぬる人の琴の音か」の広まりを実感させるのは、この詞章が黒田節の歌詞となっていることを挙げれば十分である。福岡県の民謡で「酒は飲め飲め、飲むならば~」で始まる有名な曲である。この「黒田節」は福岡男児の猛者ぶりを歌ったものと思われがちだが、そうした理解が通用するのはどうやら一番だけのようだ。一般に紹介されている歌詞(たとえば)をみても、二番が「峰の嵐か松風か 尋ぬる人の琴の音か 駒をひかえて聞く程に(駒ひきとめて立ち寄れば) 爪音つまおとしるき(たかき)想夫恋そうぶれん」となっているので、酒豪ぶり猛者ぶり云々とは結びつかない。このあたりは、いわゆる「博多民謡・黒田節」なるものが世間に紹介された経緯と関わるらしく、黒田節と命名されたのは福岡地方に伝わる複数の俗謡を一曲に整理した結果だったようだ。その一番に据えられた「酒は飲め飲め飲むならば~」ばかりが有名になり、そのイメージが全体を代表するようになっているが、「峰の嵐か松風か」は他ならぬ小督伝説の詞章であり、他にも『平家物語』月見の段に引かれている今様が歌詞に取り入れられていたりする。ここから窺い知れるのは、要するに「峰の嵐か松風か、たづぬる人の琴の音か」の詞章が独立した今様として切り出されていたということである。それが九州にも伝播して在地の俗謡化していったのだろう。

すこし話が脱線してしまったが、小督伝説は「峰の嵐か松風か、たづぬる人の琴の音か」の詞章によって広く知られるようになっていたのは確かだろう。オリジナルである『平家物語』の文章として親しまれていただけでなく、謡曲「小督」の中でも“謡われ”ていたはずだから、長唄や小唄といった謡い物にもそれ相応の影響を与えていたに違いない。そして謡い物がポピュラーな芸能・娯楽だった時代には、現代人が想像するよりずっと広い範囲で「峰の嵐か松風か」の詞章は口ずさまれたものと思われる。



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by office34 | 2013-10-14 23:46 | 京都本・京都ガイド