Ours is essentially a tragic age, so we refuse to take it tragically. The cataclysm has happened, we are among the ruins, we start to build up new little habitats, to have new little hopes. It is rather hard work: there is now no smooth road into the future: but we go round, or scramble over the obstacles. We've got to live, no matter how many skies have fallen. This was more or less Constance Chatterley's position. The war had brought the roof down over her head. And she had realised that one must live and learn.
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2014年 02月 13日
曾根崎心中・道行き
“曾根崎心中”を知っているかと問われると、たいていの人は「知っている」と言うに違いない。しかし、ほとんどは「作品のタイトルなら知っている」の地点で留まっているのではないだろうか。もちろん、中には奇特な人もいる。文楽の上演を見たことがある人もいるだろうし、大学は文学部、専攻は日本の近世文学といったケースなら否が応でも近松の作品と向き合わざるを得ない。だがそうした人々を含めるにしても、いわゆる世間一般なるものを想定すれば“曾根崎心中”とまともに向き合ったことのある人は少数派になると思う。当方もその少数に入らない側、すなわち当たり前のようにタイトルは知っているものの中身は詳しく知らない側である。

しかし“曾根崎心中”のクライマックスでもある道行きは、名文との評判も高い。そんな評価自体は何度か耳にはしていたが、それでもかの道行き自体を読んだことがあるかというと、実はこれもNONであった。だが、それではいくらなんでも寂しすぎる。ということで、このほど一念発起、道行きのくだりぐらいは原文で読んでおこうと思って手を出したのだが、やはり難しい。この際、古文単語や古典文法がどうこうというのは措いておこう。そういったところは一応は理解できているつもりなのだが、その上でやはり近松は読みづらいと思う。単に読み慣れていないからだと言われると、そうかも知れないのだが、要するに浄瑠璃の台本、その独特の書き方がどうにも敷居が高いのである。ためしに岩波文庫からのコピーを貼ってみる。

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まずパッと見てわかるように、本文とは別の情報が書き込まれていて読みづらい。「フシ」とか「中」とか「スエテ」とか、小さな文字で添えられている箇所である。専門的な知識は持ち合わせていないが、これらは場面の展開や語りの口調を指示する記号といえばいいのだろう。つまり、上演にあたって必要になる情報である。しかし、道行きを文章として読もうとすると、これらの記号はどうにも目障りでならない。もちろん、これらを機械的に削除してしまうと、何を書いているのがまったく分からないシロモノになってしまうのだが、だからといって、こうした記号も併せて読むのは、なかなか高度なテクニックが求められる。

これは浄瑠璃台本の表記形式の問題であり、いわば入口である。そこでつまづいているわけだから、あとは推して知るべしといったところか。たとえば浄瑠璃の特徴としてよく指摘される台詞と所作の一体性といったあたりはどうだろう。浄瑠璃と言っても、かみ砕いてしまえば人形劇の台本だろうと言うムキもあるのだが、現代劇の脚本と同列に考えていると理解なんかできたものではない。それを端的に示すのが、台詞と所作が一体的に書かれている点である。現代劇の台本に引きつけて言うならば、登場人物の台詞としてカギカッコ付きで書かれねばならない箇所と、ト書きの部分とが、明確には区別されていないのである。ト書き(=地の文)のつもりで読んでいても、いつの間にか台詞となっていたりするし、その逆もある。

また、語り物ならではの文体という問題もある。たとえば道行きの最初の部分でいえば「この世の名残、夜も名残」となっているのだが、これは「名残」という語を重ねるのが眼目がある。観客の耳に届けられる印象が重視されることはあっても、厳密な意味での文意は存在しない。もし問われるとすれば、あとから適当に取って付けるしかない。いまあえて文章にするのなら
二人はこの世に未練を残すようにゆっくりと歩いてゆく。だが夜も更けて残された時はもう少ない。そんなわずかな夜も名残惜しいとでもいうような足取りなのである。
といったあたりだろうか。これは、いうまでもなく、文法どうこうの問題ではない。「名残」という言葉から連想を広げたうえで文章めいたものを作ったにすぎない。こうした操作は、実際の上演では「名残」という言葉を聞かされた観客が、舞台の情景を重ね合わせて、それぞれが勝手に頭の中で描くものである。したがって正解とか不正解とかが出てくるものでもない。冒頭の「この世の名残、夜も名残」ほど顕著ではないにせよ、似たような操作が求められる文章は所々に出てくる。そうすると、最初からそういった性質のものだと割り切っておかねばならない。そんなところにも、浄瑠璃本の読みづらさというものがある。

しかし、読みづらい読みづらいとばかり愚痴っていては、いつまで経っても読めない。“曾根崎心中”の道行きが名文だというのなら、その名文たる所以にも接してみたいものである。そんな方向に切り替えるとすれば、今度は、どうすれば読みやすい形に整理できるかが問われるはずである。そうした視点に立つと、全体を通してリズミカルに書かれている点は大きな強みとなってくる。語り物の文体ならではの読みづらさが一方にあるにせよ、それと同時に、語り物ならでは読みやすさというものもある、ということである。この道行きについていえば、全体が七五調ベースで書かれているのは大きい。先に貼っておいた岩波文庫のコピーのような形で突きつけられると、それだけで立ち眩みも感じてしまうのだが、そこから分かりづらい記号を取り除いて、さらに七五調で改行するとどうだろう。
この世の名残 夜も名残
死にに行く身を 譬ふれば
あだしが原の 道の霜
一足づつに 消えて行く
夢の夢こそ あはれなれ
あれ数ふれば 暁の
七つの時が 六つ鳴りて
残る一つが 今生の
鐘の響きの 聞き納め
寂滅為楽と 響くなり
鐘ばかりかは 草も木も
空も名残と 見上ぐれば
雲心なき 水の音
北斗は冴えて 影映る
星の妹背の 天の川
梅田の橋を 鵠の
橋と契りて いつまでも
われとそなたは 夫婦星
必ず添ふと 縋り寄り
二人が中に 降る涙
川の水嵩も 増さるべし
錯覚のなせるワザかも知れないが、すごく読みやすくなったようだ。ここへ漢字にはふりがなをふり、段落をわかりやすくするetcの操作があれば、もう少しわかりやすくなるはずである。

もちろん、浄瑠璃本の形式や語り物ならではの読みづらさはそう簡単にクリアできるものではない。しかし、試みの一つとしては、こういうのがあってもいいと思う。


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[いい加減な凡例]
・改行は七五調に適合させるためのものである。
・台詞は、文字サイズを小さくし、行を下げて、文字色も変えた。男(徳兵衛)の台詞を青、女(お初)の台詞をピンクで示している。
・地の文スタイルを保ちつつ、内容や単語が台詞っぽい箇所は、文字サイズは変えずに、字下げを施して、文字色を変え、イタリックで示した。(2頁目「誠に今年は~」など)
・台詞から地の文の移行は、文字色とサイズを変えて示した。台詞の後ろに付いている灰色小文字の「と」や「と言ひければ」がそれ。
・1頁目の「どうで女房にや~」と、2頁目の「どうしたことの~」は当時の流行歌。




なお現代語での解釈は「#曽根崎心中」のサイトが非常に参考になる。
同サイト内の現代語訳のページ
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by office34 | 2014-02-13 05:15