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Ours is essentially a tragic age, so we refuse to take it tragically. The cataclysm has happened, we are among the ruins, we start to build up new little habitats, to have new little hopes. It is rather hard work: there is now no smooth road into the future: but we go round, or scramble over the obstacles. We've got to live, no matter how many skies have fallen. This was more or less Constance Chatterley's position. The war had brought the roof down over her head. And she had realised that one must live and learn.
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2009年 06月 17日
恋占い@地主神社
 前回のネタは、清水寺における岸駒の灯籠だったのだが、あの灯籠は「清水寺の七不思議」なるものにカウントされている。近年、清水寺そのものがNew Seven Wonders of the Worldなるものにノミネートされたとかで話題になっていた気もするが、それはさておき、この清水寺七不思議なるもの、とてもではないが七つでは収まらないのが不思議といっていいだろう。紹介する人によってズレが生じてきて、七つが八つになり、十になり、十二になりといった具合で、少しずつ数を増やしていったのに違いない。

 どういうラインナップになっているかというと、かんかん貫とか景清地蔵などが入ってくるのだが、それらはgoogleを叩くだけでもたくさんのサイトで取りあげていることが判る。それで一つひとつの詳細はそちらに任せておこうと思うのだが、当方がこれは面白いと思ったものが一つある。それは田中緑紅の紹介する七不思議に含まれていた項目である。田中緑紅は、このブログでも何度か登場しているはずだが、「京を語る会」という集まりを主宰していた史家である。その談話会で紹介された話が「緑紅叢書」という形にまとめられており、古い時代の証言談として面白く読ませてもらっている次第である。

 その田中緑紅の清水寺七不思議だが、耳に留まったものを片端から列挙したようで、合計すると二十二(説明なしで名前だけのものがあと三つ)の不思議が紹介されている。その中の一つ。
盲石
地主神社の前に東西に分れて石があります。片方の石から目を閉じて前方の石まで歩き一直線に歩いて行けば幸が来ると云いますが中々真直には歩けないものです。(「京の怪談と七不思議」より)
というもの。この説明を読むと、清水寺を訪れたことのあるほとんどの人が、あ~と頷くに違いない。地主神社境内にあって、いつも誰かがチャレンジしている「恋占いの石」なるもののことである。現在では、恋が叶うと宣伝されている、かの石はもともとは「幸が来る」というだけのものだったようである。いつ頃のことかは分からないが、恋というスパイスをまぶして、客寄せにうまく活用しているのだろう。

 と、こういう書き方をすると、いかにも地主神社のやり方が、あざとい商魂だと決めつけているようになってしまうのだが、実はそういうわけではない。もう少し掘りさげていく必要がある話なのである。

 この「恋占いの石」は、もともとは「恋」とは関係がなかった。厄続きの人なら厄除けを願ったかも知れないし、お金に困っている人なら金運の願を掛けただろう。どういう内容かは措くにしても、なんらかの幸運がもたらされると言われていたことが、田中緑紅の紹介から知られる。それをさらにさかのぼると、とりあえずは江戸時代まで行き着くことができる。江戸時代の旅行案内記には「盲目石」と名づけて「清水寺地主権現の前なり。此石左右に弐つ堀居たる石より石まで目をふさぎてあゆみよるにすぢ違て行あたらず。此古実由緒有事にこそしらずかし」(京羽二重)という記述が見られる。この記述には、願掛けの要素は含まれていないが、辿り着けないと言われているのなら、マグレでもたどり着いたらラッキーとなるのは、ごく自然の発想である。そこから推測するに、古くからの願掛け石ではあったが、大きく売り出す時に差別語を冠しておくわけにはいかない、それを外して新たなネーミングを考えるにあたって「恋占い」ということにしておこう、といったところだろう。

 ただ、この推測だけでは、まだ「恋」の要素に特化して強調するあたりが商魂だとの誹りも免れかねない。だが『京都百話』(奈良本辰也ほか*、角川書店、昭和五十九年)という本があり、「清水寺」の項目で地主神社が取りあげられ、「この神社は、恋の神様であったような気がする」と書かれている。根拠となっているのは、仮名草子の『恨之介』になるわけだが、『恨之介』の書きぶりからそう思われると言っているのである。執筆の当時、すでに恋の神様であることを現在のように大々的に謳っているのであれば、恐らくはこういう口吻にはならなかっただろう。つまり、神社のPRとして「恋占い」を積極的に利用し始めたのは昭和も終わりの頃なのだろうが、恋絡みの願掛けといった素地は、それ以前から、もっと言えば江戸時代からあったと思われる。
*『京都百話』は、奈良本辰也と高野澄、左方郁子、百瀬明治の四名による共同執筆となっていて、項目ごとの文責は示されていない。しかし、「清水寺」の項目は奈良本御大のものと思って、間違いない。一読いただければ、おそらく頷いてもらえるはずだ。

 そういう方向で考えると、地主神社のもう一つのウリである丑の刻参りの杉についても、色合いが違って見えてくる。願を掛けて叶えてもらう方が石であれば、叶わなかった場合の晴らしどころはどこだろう。恨みを同じ石にぶつけても固すぎる、殴りつけたところで手を痛めるだけ、となると木の方で……と考えてしまうのだが、これではやや不謹慎か。


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by office34 | 2009-06-17 03:39 | 京都本・京都ガイド