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Ours is essentially a tragic age, so we refuse to take it tragically. The cataclysm has happened, we are among the ruins, we start to build up new little habitats, to have new little hopes. It is rather hard work: there is now no smooth road into the future: but we go round, or scramble over the obstacles. We've got to live, no matter how many skies have fallen. This was more or less Constance Chatterley's position. The war had brought the roof down over her head. And she had realised that one must live and learn.
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2010年 02月 04日
失われた仁丹版
失われた仁丹版_a0029238_17161125.jpg

 仁丹版町名板の話をするときは、まずはこんなブツを見かけましたと、仁丹版の写真を掲示するのが原則である。しかし、今日の写真(クリックで拡大)には、どこにも仁丹版らしきものは写っていない。いったいどういうことなのだろう。

 生活圏が下鴨界隈にあって、この風景(家屋)を見ただけで「見覚えがあるな、ああ中通りか」と反応する人なら今回の本題もすぐに気が付くに違いない。この写真には、あるべきはずの仁丹版が消えているのである。「悪書追放云々」と書かれた看板の左横に、つい最近までは「上京区下鴨松之木町」と書かれた仁丹版が貼り付けられていたのである。現在の行政区分に合わない上京区バージョンだったり、「上京区」の部分を含めて町名までが一行書きになっていたりと、細かいチェックを入れていくと、それなりに面白い一枚だった。それに、なによりも保存状態が非常によい一枚で、琺瑯の特質を存分に発揮している一枚でもあった。それが、ちょうど本日、下鴨の中通りを通りかかって気が付いたのである。あっ無くなっている!

 続いて、むかむかと怒りのような感情が湧いてきた。ここで所有権の話をするなら、かつて貼られてあった一枚は、もちろんのこと、当方の持ち物ではない。したがって、正当な所有者の行為だとすれば、煮て食おうと焼いて食おうとその人の勝手なのであって、当方がむかむかするなど筋違いも甚だしい。しかし、何か大切な物が無頓着に破壊されたような気分にさせられた。

 いや、もう少し正直に書いた方がいいだろう。松ノ木町の仁丹版が無くなっているのを見つけた時、最初に頭に浮かんだのは、所有者云々のことではなく、「やられた!」という言葉だった。どこかの珍品マニアか、もしくは転売屋が夜陰に紛れて持っていったに違いない、そう考えたのである。というのも、この場所は比較的よく通っているのだが、かつて一度たりとも、この家に人の出入りがあるのを見かけたことはなかったから、所有者(=家人)が手を下したとは思えなかったのである。

 この手の町名板を手許に所有しておきたいと願う輩が、この家に押し掛けて家人を強引に呼びだして頼み込んだ、あるいは買い取ったという可能性がないわけではない。だが常識的な判断をすると、その可能性は低い。普通に思い付くのは、やはり窃盗という線だろう。

 そして、次に思ったのは、仁丹版を剥ぎ取ってゆく輩の精神構造についてである。仁丹版が古物商の店頭に並んでいて、数千円~一万ちょいあたりで売買されているのは周知のことである。理不尽な物欲を満たしたかったのでなければ、一万円そこそこの銭ッコに目がくらんだのだろう。辛辣な書き方をするのは、仁丹版の価値は、町名板それ自体にあるのではなく、実際のその場所に貼られているという点がポイントになるからである。つまり町名板が町名板として機能する場所から剥がされたら、その時点で価値は大きく削がれてしまう、松ノ木町の仁丹版に即して言えば、左京区下鴨松ノ木町に「上京区下鴨松之木町」と書かれた町名板が貼られているところに価値があるのであって、町名板だけを持っていったら元も子もなくなってしまうと思っているからである。

 もちろん不況不況と言われる昨今だから、一週間程度の食い扶持くらいとはいえ、1万円そこそこでも欲しがる気持ちも分からないではない。しかし、そのものが有している文化的な価値を破壊してまで、欲しがらねばならない金額なのかどうか、甚だ疑わしい。むしろ価値を理解していない輩が、その阿呆さゆえに目先の小銭に飛びついたとしか思えない。

 失われた仁丹版の痕跡を見つつ、そうしたことを考えてむかむかしていたわけだが、少し時間が経つと、また別な考えも浮かんできた。まず何よりも盗まれたと決めつけるわけにはいかない。正当な所有者が取り外してしかるべきルートに流したのかも知れない(先に書いた所有権云々の話にはこの段階で思い至った)。それ以前に、いずれは消えて無くなる運命だったとも言える。一種の諦観である。かの寂光院が放火された際、当時の住職だった小松師が「かたちのあるものはいずれ失われます」とコメントしたのは鮮やかだったが、仁丹版にしても、どんどん失われていく中で、そのごく一部が現在に生き残っているから面白いのに過ぎないのであって、いま現在残っているものがいつまでも残り続ける保証など、どこにもない。今回のケースは、仮に盗まれたのだとすれば、その失われ方があまりにも下劣かつ不愉快だから、直感的な怒りにはなったものの、たまたま順番が松ノ木町の仁丹版に巡ってきただけと考えれば、怒りも案外あっさり静まってくれる。

在りし日の松ノ木町(松之木町)の仁丹版(写真クリックで拡大)
失われた仁丹版_a0029238_17331353.jpg



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by office34 | 2010-02-04 17:34 | 町名看板